
コラム
人事評価の項目は、そのまま採用の評価軸に使える
人事評価の項目は、言い換えずにそのまま採用の評価軸に置けます。ただ、企業がよく聞く質問だけでは、判断材料が出てこない項目があります。公開されている国家公務員の評価項目を使い、経験や話し方の違う新卒30人のペルソナで面接をシミュレーションして、どの項目で判断材料が足りなくなるか、質問を足すとどう変わるかを確かめました。
なぜ人事評価の項目か
採用と人事評価が同じ言葉なら、入社後の結果と突き合わせられる
採用の評価軸を、人事評価とは別に一から作る会社は少なくありません。ただ、採用で使う言葉と人事評価で使う言葉が違うと、選考時の点数と入社後の評価を並べても、どの評価軸が入社後の活躍につながったのかを言えません。
人事評価の項目をそのまま採用の評価軸に置けば、言葉を言い換える手間がかからず、選考時の点数と入社後の評価を同じ項目で比べられます。入社後の結果で確かめるときの考え方は「面接の評価が正しかったかは、入社後にしか分からない」にまとめています。
人事評価の前提
人事評価の項目は、日々の仕事ぶりを見る前提で書かれている
人事評価の項目は、評価期間のあいだの仕事ぶりを見て付けることを前提に書かれています。国家公務員の人事評価について、人事院と内閣人事局の人事評価ガイドは、能力評価を年1回としている理由のひとつに、求められる職務行動が安定してとられているかを評価するには、一定の期間を観察することが望ましいことを挙げています。
面接は、多くても1時間ほどの会話です。候補者が話した経験の中に、その項目に当たる行動が出てこなければ、評価する材料がありません。Huffcutt氏らが2001年に発表したメタ分析は、47の研究にある338の評価を分類し、面接で最も多く評価されていたのは性格と対人スキルだったと報告しています。面接の会話には、見えやすいものと見えにくいものがあります。
出典:人事院・内閣人事局「人事評価ガイド(制度全般編)」2026年4月版 https://www.jinji.go.jp/content/000013132.pdf/Huffcutt, A. I., Conway, J. M., Roth, P. L., & Stone, N. J. (2001). Identification and meta-analytic assessment of psychological constructs measured in employment interviews. Journal of Applied Psychology, 86(5), 897–913. https://doi.org/10.1037/0021-9010.86.5.897
当社の実験
企業がよく聞く質問だけでは、4つの項目で判断材料が出にくかった
人事評価の項目をそのまま評価軸に置いたとき、どの項目で判断材料が足りなくなるのかを、ペルソナを使った面接のシミュレーションで確かめました。
シミュレーションの条件
- 評価項目国家公務員(本府省の係員)の能力評価の着眼点12個を、言い換えずにそのまま評価軸にしました。出典:人事院・内閣人事局「人事評価ガイド(被評価者の手続編)」2026年4月版(項目名)/同「人事評価マニュアル《資料編》」令和3年9月版(説明文)
- 質問企業の人事担当者を対象にした2つの調査で、面接で聞く質問として挙がった項目をすべて使い、10問にしました。出典:学情「面接に関する人事担当者アンケート」2023年2月(人事担当者70人、本選考)/リクナビ就活準備ガイド「インターンシップ面接でよく聞かれる質問と答え方のヒント」2024年12月〜2025年1月調査(インターンシップの選考)
- ペルソナ新卒の候補者30人です。経験(部活、研究、アルバイト、留学、長期インターンなど10通り)と、話し方(具体的に話す、口数が少ない、抽象的になりがちの3通り)を組み合わせました。
- 採点Proomiと同じ採点の指示で、面接の記録を採点しました。面接のシミュレーションと採点は、別々に行っています。
Proomiでは、候補者の発言の中にその項目の根拠が見つからないとき、低い点を付けるのではなく、「判断材料なし」として記録することができます。今回のシミュレーションも、この形で採点しました。下の図は、項目ごとに、判断材料なしになったペルソナの数を並べたものです。
企業がよく聞く10問で面接したとき、判断材料なしになったペルソナの数(30人中)
判断材料が出た項目
5項目とも、30人中2人以下
判断材料が出にくかった項目
4項目で、30人中12〜20人が判断材料なし
国家公務員(本府省の係員)の能力評価の着眼点のうち、倫理の2項目を除く10項目です。面接は、ペルソナを使ったシミュレーションです。
粘り強さ、情報の整理、積極性は、30人の誰も判断材料なしになりませんでした。学生時代に力を入れたことや、アルバイトやサークルの経験を聞くと、困難を乗り越えた話や、自分から動いた話が自然に出てくるためです。
一方で、指示・指導の理解と上司への報告は30人中20人、正確性は15人、迅速な作業は12人が判断材料なしでした。採点の根拠には「上司や周囲からの指示・指導を受けて理解した経験についての発言はない」といった記述が並びます。どれも、上の立場の人のもとで日々働く場面を前提にした項目で、学生生活を聞く質問からは、その場面の話が出てきません。
ペルソナの話し方の違いでは説明できません。具体的に話すペルソナでも、口数の少ないペルソナでも、判断材料なしになった数はほぼ同じでした。足りなかったのは候補者の話ではなく、その項目に当たる場面を聞く質問のほうです。
出典:人事院・内閣人事局「人事評価ガイド(被評価者の手続編)」2026年4月版 https://www.jinji.go.jp/content/900006282.pdf/人事院・内閣人事局「人事評価マニュアル《資料編》」令和3年9月版 https://www.jinji.go.jp/content/900006260.pdf/学情「面接に関する人事担当者アンケート」2023年2月 https://service.gakujo.ne.jp/wp-content/uploads/2023/10/230222-comenq.pdf/リクナビ就活準備ガイド「インターンシップ面接でよく聞かれる質問と答え方のヒント」 https://job.rikunabi.com/contents/internmensetsu/3286/
質問を足すと
項目に合わせて質問を3つ足すと、判断材料なしはほぼなくなった
同じ30人のペルソナで、判断材料が出にくかった項目に合わせた質問を3つ足し、13問で面接をシミュレーションしました。たとえば、指示・指導の理解に合わせて、次の質問を足しています。
足した質問の例(指示・指導の理解に合わせたもの)
先輩や上司など、上の立場の人から指示や指導を受けて取り組んだ経験を教えてください。
同じペルソナでも、質問によって出てくる話が変わります。下は、カフェでアルバイトをしているペルソナの記録です。10問のときは、アルバイトの経験を聞いても新人に教える側の話になり、指示・指導の理解の判断材料は出ませんでした。足した質問では、店長の指示を受けて取り組んだ話が出てきました。
同じペルソナの、質問を足す前と後の記録(評価項目:指示・指導の理解)
企業がよく聞く10問のとき
AIカフェのアルバイトでは、どのような業務を担当されていますか。印象に残っている経験があれば教えてください。
候補者レジとドリンクの担当です。2年目からは新しく入った人に最初の1週間教える役も任されていて、これまでに6人くらい担当しました。
AI教えるうえで、何か気をつけていることはありますか。
候補者最初の日に全部を説明しないようにしています。自分が入ったときに一度に言われて覚えきれなかったので、1日目はレジだけ、というように日ごとに範囲を区切っています。
判断材料なし採点の根拠:「上司や周囲からの指示・指導を正しく理解したことを示す発言はない」。出てきたのは、新人に教える側の工夫の話でした。
質問を足した13問のとき
AI先輩や上司など、上の立場の方から指示や指導を受けて取り組んだ経験を教えてください。
候補者カフェのアルバイトで、店長から廃棄を減らしてほしいと言われたことがあります。フードの仕込み量を、曜日ごとの売れ行きを見て調整するように指示されました。
(中略)
AI取り組む中で、店長から指導を受けて考え方が変わったことなどはありましたか。
候補者最初は減らすことばかり考えていたのですが、店長から「売り切れでお客様をがっかりさせるのも損失だ」と言われました。それで、雨の日や近くでイベントがある日は少し多めにするなど、減らすだけではない調整をするようになりました。
判断材料あり採点の根拠(要約):店長の指示を理解して仕込み量を調整し、「売り切れも損失」という指導の意図を汲んで、調整の仕方を変えている。
ペルソナを使ったシミュレーションの記録から抜粋しました。あいづちや前置きなどを一部省いています。
質問を足す前と後で、判断材料なしになったペルソナの数(30人中)
足す前:企業がよく聞く10問
1人あたり1〜6項目が判断材料なし
足した後:項目に合わせて3問を足した13問
1人あたり0〜2項目に減った
同じ30人のペルソナで、質問だけを変えてシミュレーションしました。
指示・指導の理解は、判断材料なしが30人中20人から0人になりました。正確性と迅速な作業も0人です。1人あたりの判断材料なしの項目は、1〜6個から0〜2個に減りました。
上司への報告だけは、4人が判断材料なしのまま残りました。記録を読むと、ミスやトラブルの話が、自分で直した話や、お客様や宿など相手先に連絡した話で終わっていて、上の立場の人に報告した話が出てきません。質問を足すだけでなく、確かめたい行動に当たる聞き方になっているかまで、項目に合わせる必要があります。
質問の並べ方によっても、判断材料の出方は変わります。知識習得は、質問を足す前の10問でも判断材料なしが3人にとどまりました。ゼミや研究のテーマ、高校時代に力を入れたことを聞く質問で、学んだ話が自然に出てくるためです。
AI面接の特徴
どの項目で判断材料が足りないかは、面接の記録から分かる
AI面接では、項目ごとに採点の根拠が記録に残ります。根拠が見つからなかったことを「判断材料なし」として残しておけば、それが特定の項目に集まっているとき、その項目を確かめる質問が足りていないと分かります。
人の面接官は、材料のない項目にも点数を付けがちです。鈴木氏が2016年に発表した、国内企業の新卒採用の最終面接を分析した研究でも、面接官が評価軸ごとに分けて評価するというより、全体の印象で点数を付けている傾向が指摘されています。点数が付いてしまうと、その項目を確かめられていたのかどうかは、記録からは分かりません。評価軸の読み方が面接官によって分かれる問題は「評価軸の解釈が分かれると、同じ回答でも面接官によって点数が分かれる」にまとめています。
出典:鈴木智之(2016). 面接評定要素に着目した採用選考面接の評価者間信頼性の実証分析. 日本労務学会誌, 17(1), 69–91. https://doi.org/10.24592/jshrm.17.1_69
確かめ方の限界
ペルソナでのシミュレーションなので、実際の候補者では数が変わる
今回の結果は、ペルソナを使ったシミュレーションです。実際の候補者は、ペルソナより話が広がることも狭まることもあるため、判断材料なしになる数は変わります。採点には、Proomiと同じ採点の指示を使いました。Proomiでは、採点に使うモデルもその時点で適したものを選ぶため、実際の採点では、このシミュレーションとは異なるモデルになる可能性があります。
国家公務員の評価項目のうち、倫理の2項目は図から除きました。「国民全体の奉仕者として」のように公務員に向けた文言で、新卒の面接で話題に上らないのは、面接で見えにくいからではなく、文脈が違うためです。
使える条件
自社の項目をそのまま書けるサービスなら、人事評価の言葉で面接できる
人事評価の項目をそのまま置けるのは、評価軸を自社の言葉で書けるサービスです。サービスがあらかじめ用意した評価軸から選ぶ形では、自社の項目を、用意された評価軸のどれかに当てはめて使うことになります。
Proomiでは、評価軸を自社の言葉で書けます。人事評価の項目をそのまま置けるうえ、面接の質問も自社で足したり変えたりできるので、判断材料が足りない項目に合わせて質問を整えられます。
比較のポイント
人事評価の項目を使えるかは、3点で確かめる
AI面接サービスを比べるときは、次の3点を確かめると、人事評価の項目をそのまま使えるかが分かります。
01
項目の文言を、そのまま評価軸に書けるか
言い換えが必要だと、人事評価と同じ物差しになりません。
02
判断材料がなかったことが、低い点と区別して残るか
区別されないと、どの項目で質問が足りないのかが分かりません。
03
面接の質問を、自社で足したり変えたりできるか
判断材料が足りない項目が見つかっても、質問を変えられなければ直せません。
Q&A
よくある質問
人事評価の項目が多いとき、全部を評価軸にすべきですか
全部を使う必要はありません。評価軸を増やしても、判断に使える情報が同じだけ増えるとは限りません。採用で確かめたい項目に絞り、言葉は人事評価のまま使います。評価軸の数については「評価軸の数は、判断材料の数ではない」にまとめています。
中途採用でも同じ結果になりますか
今回は新卒のペルソナで確かめました。中途採用の候補者には職務経験があるので、上司への報告や正確性のような項目も、前職の話から判断材料が出やすくなるはずです。どの項目で判断材料が足りなくなるかは、採用の種類ごとに、面接の記録で確かめる必要があります。
質問を足すと、面接は長くなりませんか
長くなります。今回のシミュレーションでは、平均の往復数が、10問で25.8回、13問で32.1回でした。質問を足すときは、判断材料がすでに十分に出ている項目に向けた質問を減らせないかも、あわせて考えます。
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判断材料がそろったら、入社後の結果と照らし合わせる
質問を整えて判断材料がそろえば、選考時の点数と入社後の評価を、同じ項目で並べて見られます。評価軸を書き換えたときは、過去の面接で試すこともできます。
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場面ごとの使い方
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