コラム

評価軸の数は、判断材料の数ではない

評価軸を6つ用意しても、判断に使える情報が6つになるとは限りません。国家公務員の人事評価の公開データを例に、点数が一部に集まる理由と、AI面接を選ぶときに確かめたい点をまとめました。

公開データ

国家公務員の人事評価では、下位の評語がほとんど使われていない

内閣官房内閣人事局は、国家公務員の人事評価で、どの評語が何%の職員に付いたかを調査しています。評語は2022年10月に5段階から6段階へ変わったため、変更前の旧制度と変更後の新制度を比べられます。新制度(6段階)の一般職員の能力評価では、「優良」が48.0%、「良好」が33.2%を占めました。最も低い2つの評語(「やや不十分」と「不十分」)は、合わせて0.5%です。

国家公務員(一般職員)の人事評価:評語ごとの割合

2022年10月に、評語が5段階から6段階に変わりました。同じ種類の評価について、変更前(旧制度)と変更後(新制度)を並べています。左が高い評語、右が低い評語です。

能力評価

旧制度・5段階平成30年10月〜令和元年9月

最も多い2つ(A・B)で 90.4%/最も低い2つ(C・D)は合わせて 0.4%/実質段階数 2.3

新制度・6段階令和5年10月〜令和6年9月

最も多い2つ(優良・良好)で 81.2%/最も低い2つは合わせて 0.5%/実質段階数 2.7

業績評価

旧制度・5段階令和元年10月〜令和2年3月

最も多い2つ(A・B)で 88.4%/最も低い2つ(C・D)は合わせて 0.5%/実質段階数 2.4

新制度・6段階令和6年10月〜令和7年3月

最も多い2つ(優良・良好)で 77.8%/最も低い2つは合わせて 0.5%/実質段階数 2.8

数値の表を見る
能力評価・旧制度S 9.1%A 53.2%B 37.2%C 0.4%D 0.0%
能力評価・新制度卓越 1.2%非常に優秀 17.1%優良 48.0%良好 33.2%やや不十分 0.4%不十分 0.1%
業績評価・旧制度S 11.2%A 52.1%B 36.3%C 0.4%D 0.1%
業績評価・新制度卓越 1.8%非常に優秀 20.0%優良 46.4%良好 31.4%やや不十分 0.4%不十分 0.1%

出典:内閣官房内閣人事局「見直し後の人事評価制度の運用状況」(令和8年3月)、同「評語分布調査(平成30年10月〜令和2年3月)」(令和2年9月)。資料(PDF)。旧制度の業績評価は、新制度と同じ時期(10月〜3月)の期間を載せています。実質段階数 = 1 ÷ ( p12 + p22 + … + pk2 )。piは評語iが付いた割合、kは評語の数です。一般的な統計手法による当社の試算値です。旧制度と新制度は調査の時期も対象も異なり、差は前後の比較です。府省等ごとに抽出したサンプル調査で、分布率は母集団の数で復元した値です。四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります。

なお、この調査の対象は人事評価で、面接の評価ではありません。それでも、段階を細かく用意しても評価者が実際に使う段階は一部に集まる、という現象を、公的機関の数字で確かめられます。

段階を6つ用意しても、評価者が実際に使うのは、そのうちの一部です。

ただし、この数字だけでは、職員の実力が似ているのか、評価の付け方が似ているのかを区別できません。区別できないことが、次の節から書く問題の出発点です。

経緯

見直しの前後で、実際に使われる段階は約0.4増えた

評語を増やした目的について、内閣人事局の検討報告書(2021年)は、区分を増やして識別性を高めることを挙げています。同じ報告書は、評語の意味の受け止め方が評価者の間で揃っていないことも課題に挙げています。B評価は「通常」を意味するはずなのに、通常より下の評価として受け止められている、という指摘です。

見直しの結果は、数字に表れています。各評語の割合の偏りを考えて、実際に使われている段階の数(実質段階数)を数えると、能力評価では旧制度が2.3、新制度が2.7、業績評価では旧制度が2.4、新制度が2.8でした。見直しの後で、使われる段階は増えています。

ただし、増えた幅は約0.4で、評語を1つ増やした分(1.0)には届いていません。新制度は6段階を用意していますが、実質的に使われているのは3段階前後です。最も低い2つの評語が占める割合も、能力評価では0.4%から0.5%、業績評価では0.5%のままで、ほとんど変わっていません。

最も低い2つの評語が使われない理由は、この数字からは分かりません。評価者が低い評価を付けにくいのかもしれませんし、実際に低い評価の職員が少ないのかもしれません。どちらの場合も、使われない段階は、判断の材料になっていません。

用意した段階の数と、使われる段階の数は、別のものです。

面接の評価に置き換えると、評価軸や段階をいくつ用意したかに加えて、そのうちいくつが実際に使われているかも確かめる必要があります。

採用に当てはめると

面接の評価でも、点数が一部に集まる理由は3つ考えられる

面接の評価で点数が一部に集まっている場合、理由は次の3つに分けられます。点数の分布だけでは、このうちのどれに当たるかを区別できません。

01

各段階の説明が抽象的

「コミュニケーション力が高い」のように、行動を書かずに印象で書かれていると、AIも面接官も無難な中間の点数を選びます。

02

その評価軸を確かめる質問がない

評価軸は用意してあるのに、その評価軸を確かめる質問を面接に入れていない場合です。判断の材料がないため、評価が一部の点数に集まります。

03

応募者の顔ぶれが似ている

書類選考の段階で候補者が絞られていれば、点数の差が小さいことが正しい結果になります。この場合、評価軸に問題はありません。

もう1つ、人の面接官には、1つの印象がすべての評価軸の点数に影響するハロー効果があります。この影響が大きいと、6つの評価軸が、実質的には1つの評価軸として働きます。

確かめ方

評価軸が機能しているかは、平均ではなく分布で分かる

評価軸ごとの平均点は、その評価軸が候補者を分けていても、分けていなくても、同じ値になることがあります。次の2つの評価軸は、20人の平均がどちらも3.0です。

例:20人の候補者に付いた点数(棒の上の数字は人数。標準偏差は20人全体で計算)

評価軸A点数が幅広く分かれている

1点2点3点4点5点
  • 平均点3.0
  • 標準偏差点数のばらつき1.14
  • 最頻値の占有率最も多い点数の割合30%

候補者の差が、点数に表れている

評価軸B点数が3点に集まっている

1点2点3点4点5点
  • 平均点3.0
  • 標準偏差点数のばらつき0.84
  • 最頻値の占有率最も多い点数の割合60%

候補者の差が、点数に表れていない

平均点より先に、分布を見てください。標準偏差が小さく、最頻値の占有率が高いほど、候補者の間に差がありません。

平均点が同じでも、評価軸が候補者を分けているとは限りません。

人が採点する場合は、面接官ごとの違いが点数に混ざります。評価シートの形式は揃っていても、記載の細かさや内容、点数の甘辛は面接官ごとに違うためです。同じ回答でも、甘い面接官は4点、辛い面接官は2点を付けることがあり、点数のばらつきが候補者の差か面接官の差かを区別できません。全員分を同じ尺度にそろえる作業が、確認の前に要ります。

AI面接には、この確認をしやすくする面があります。採点の指示が全員に共通なので、面接官ごとの違いが点数に混ざらず、全員の評価軸ごとの点数が同じ尺度で記録に残ります。AIにも点数の付け方の傾向はありますが、その傾向が候補者ごとに変わることは少なくなります。AI面接サービスを選ぶときは、評価軸ごとの点数を全員分そのまま取り出せるかも確かめておくとよいでしょう。

選び方

機能していない評価軸を見つけたあとに直せるかが、サービスの差になる

機能していない評価軸が見つかったとき、直す対象は、評価軸の説明か面接の質問です。直したあとは、同じ職種・同じ応募者層で採点し直して、点数のばらつきが広がったかどうかで確かめます。

重みづけを変えても、この問題は直りません。重みが動かすのは合計点だけで、全員が3点の評価軸に重みを掛けても、全員が同じ点数のままだからです。

ですから、AI面接サービスを選ぶときは、評価軸の数よりも、評価軸の定義を自社で書き換えられるかどうかを確かめてください。サービス側が評価軸を固定している場合、機能していない評価軸が見つかっても、その評価軸を直せません。

各サービスにおいて、評価軸を誰が決める設計なのかは、公開情報にあたって1社ずつ確かめ、比較記事にまとめました。

比較

AI面接サービス比較9選 →

主要9サービスを、何を最適化しているかで4つの型に分けて比べる。

Q&A

よくある質問

評価軸はいくつ用意すればよいですか

数に決まった正解はありません。数よりも、用意した評価軸がそれぞれ候補者を分けているかどうかを確かめてください。

面接以外の評価でも同じことは起きますか

起きます。この記事で見た国家公務員の人事評価が一例です。入社後の人事評価でも、点数が一部の段階に集まっていないかを確かめられます。

何件たまれば確かめられますか

目安は、1つの職種あたり100件前後です。数十件では、1人の違いで占有率が数ポイント変わるため、本当の差と偶然の差を区別できません。

次に読む

分けられていても、評価が正しいとは限らない

評価軸が候補者を分けていることを確かめたあとには、その点数が入社後の活躍と結びついていたかを確かめる段階があります。結びついていなかった評価軸は、書き換えて過去の面接で試せます。

検証

面接の評価が正しかったかは、入社後にしか分からない →

選考の評価が正しかったかを、入社後の結果で確かめる。

再採点

評価軸を書き換えたら、過去の面接で試せる →

書き換えた評価軸で過去の面接を採点し直し、点数の変化を見る。

関連ページ

場面ごとの使い方

評価軸の数と分布の考え方は、基準をつくるときと新卒採用で特に役に立ちます。

標準化

評価標準化 →

評価軸を先に決め、面接官による評価のぶれを抑える。

新卒

新卒採用 →

同じ基準で全員を見て、その基準を毎年改善する。

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